筋萎縮性側索硬化症
筋萎縮性側索硬化症は、運動神経系が障害される進行性の神経疾患で「ALS」とも呼ばれています。運動神経系は大きく上下に分けられます。脳から脊髄に繋がる「上位運動ニューロン」、脊髄から末梢へ繋がる「下位運動ニューロン」です。筋萎縮性側索硬化症は、上位運動ニューロンと下位運動ニューロン、両部位の運動神経系が障害されている状態を指します。
日本における患者数は1万人弱と推定されており、10万人に5人の確率で発症します。好発年齢は50~70歳ですが、稀に若年層でも発症することもあります。
筋萎縮性側索硬化症の原因
筋萎縮性側索硬化症は19世紀に発見されましたが、現在も明確な原因は判明していません。
殆どの場合遺伝とは無関係ですが、約5から15パーセントで遺伝子に関係のある家族性ALSと言われています。
殆どの場合、遺伝との関係性はありませんが、約5~15パーセントは遺伝性の「家族性ALS」であることがわかっています。これまでの家族性ALSの解析により、SOD1、FUS、TARBDP、Optineurin等の遺伝子に異常が認められることが多く、これらの遺伝子が発症に関係していると考えられています。TDP-43というタンパク質も発症に関与していると考えられています。
筋萎縮性側索硬化症の症状
筋萎縮性側索硬化症では、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両方に障害が生じるます。
上位運動ニューロンに障害が起きた場合、腱反射の亢進が見られます。
下位運動ニューロンに障害が起きた場合、筋肉量が落ちて力が入らず、クランプや筋線維束性収縮の症状が出ます。クランプとは、神経に障害を受けた筋肉に痛みが生じる状態のことであり、筋線維束性収縮は筋肉が痙攣したように動く状態のことです。嚥下障害などの球症状が出ることが有ります。呼吸筋麻痺が進行すると自力で呼吸ができなくなり、人工呼吸器を必要とします。
筋萎縮性側索硬化症の治療
筋萎縮性側索硬化症は原因が解明されていないため、現時点では完治する方法がありません。そのため、治療は主に進行を和らげることを目的とした薬物療法を行います。
主に神経細胞の変性に関係している興奮性アミノ酸や、フリーラジカルを抑えるような薬を使用します。興奮性アミノ酸の毒性は神経細胞を壊滅してしまいます。また、フリーラジカルは過剰に発生することで神経細胞に障害が発生します。そのため、これらの発生を抑制することで進行を遅らせると考えられています。
日本では内服ではリルゾール、点滴ではエダラボンという薬剤が使用可能ですが、使用にあたっては神経専門医と相談する必要があります。また、薬物療法と合わせて、機能維持を目的としたリハビリも行います。
筋萎縮性側索硬化症の予防
原因に不明な点が多いため、確実な予防法は発見されていません。
それゆえ、確実な予防策はありません。発症した場合には進行を遅らせることが大切です。早期に発見し治療を開始すれば、その分進行を和らげることが期待できます。運動機能に違和感を感じたら、神経内科専門医の在籍する医療機関を早めに受診してください。

向井内科・脳神経内科 院長向井 智哉
【経歴・資格・所属学会】
・医学博士
【専門医】
・日本内科学会認定 総合内科専門医
・日本神経学会認定 神経内科専門医
・日本脳卒中学会認定 脳卒中専門医
・日本脳神経血管内治療学会認定 脳血管内治療専門医
・日本頭痛学会認定 頭痛専門医
・日本動脈硬化学会認定 動脈硬化専門医
・日本脳神経超音波学会認定 脳神経超音波検査士
・日本認知症学会認定 認知症専門医
【認定資格】
・難病指定医
・身体障害者福祉法指定医
・認知症サポート医(オレンジドクター)
・産業医
・ボトックス®治療資格



