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つらい経験も誰かの励ましに変えられるようにとの思いを込めて|SACHIさん

つらい経験も誰かの励ましに変えられるようにとの思いを込めて

チャンネル登録者数11万人を超える人気YouTuberとして活躍するSACHIさん。「バラエティと思ってやっている」と語るチャンネルからは飾らず気さくな人柄が感じられ、思わずくすりと笑わせてくれる動画に「元気をもらえる」と多くのファンがメッセージを寄せています。画面で見せる明るい笑顔に込める思いや体験を語ってもらいました。

広島とのご縁は?

生まれたのは兵庫県なのですが、父の仕事で小学生時代を広島で過ごしました。小学生の時に柔道を始めて、中学からはそれに打ち込むために寮に入ったので、広島で友達と過ごした時間は、私にとってすごく楽しい思い出になっていました。

大学は金沢で、卒業後中学の国語教師として務め、結婚して北海道に住んでいましたが、その後心機一転して新しい生活を始める地として、好きだった広島を選びました。暖かくて、友達もいて、いい出会いもたくさんあって、子どもたちも広島での生活を楽しんでくれるようになって、ますます好きになりました。

SACHIさんのご両親や思い出の北海道、柔道に打ち込んでいた頃のお写真

とても明るいSACHIさんですが、鬱を経験したこともあると聞きました

きっかけは夫の死でした。「もっとできることがあったのではないか」と自分を責めて、何もできなくなって、重度の鬱に陥りました。子どもたちには申し訳なかったのですが、家事はもちろん、自分のことも何もできないセルフネグレクト状態になり、薬を過剰摂取するオーバードーズも引き起こしました。ずっと「自分には生きている意味がない」と考えていたので、今自分が生きているのは、当時支えてくれた保険センターの方々や家族、そして友達のおかげだと思います。

ずっと引きこもっていた生活から、外に引っ張り出してくれたのも友達でした。「さっちゃんは悪いことをしていないんだから出ておいで」と、バンドのボーカルに呼んでくれました。子どもの頃から歌が好きだったのは、自身もギターを弾いていた父の影響です。「大学生くらいになったらカラオケとかで歌う機会もあるし、スポーツで大成したらテレビで歌う機会もあるかもしれない」と言われていたので(笑)。そんな歌の力にも助けられて、少しずつ外の世界と向き合えるようになっていきました。

鬱は長い付き合いを要する病気です。ふとしたことからマイナスに引っ張られそうになるのを、自分なりにメンテナンスしながらコントロールしていかなくてはなりません。そして特別な病気ではなく、誰にでも簡単に起こり得る病気です。

それなのにやっかいなことに、誰が見ても気づいてもらえるような目印もありません。コロナ禍もあり、一人で鬱と闘っている人も多いのではないかと感じています。

さらに大病を経験したそうですね

少しずつ元気を取り戻していた時に、今度は肺の検査で引っかかりました。前年まで何もなかったのに、突然2×6cmくらいの影があると言われたのです。詳しく検査してみると、「カルチノイド」という腫瘍があることがわかりました。がんではないけれどもがんに似ているので「がんもどき」と冗談みたいな名前で呼ばれる腫瘍です。

悪性ではないものの、私の場合は気管に近く、成長速度も早く、このままでは気道を塞いでしまう恐れがあること。内視鏡で取り切れる大きさではなく、万が一体内で散ってしまうとそこから転移する恐れがあること。そうした理由から、脇腹を大きく開いて右肺の上葉部を切除することになりました。

手術は成功しましたが、今も常に肋間神経痛のような痛みが続いていますし、定期的な検査も欠かせません。

傷跡が2箇所、上が横に大きく切開した部分、下の傷跡は術後リンパ液を排出するために通された管の跡

YouTuberとして活動するきっかけを聞かせてください

手術も終わり、夫の三回忌も済ませたタイミングで、生まれ変わったつもりで新しい生活を始めようと広島に転居しました。しばらく心身を休めるつもりでしたが、たまたまヒーローショーの司会の求人を見て応募したことから、事務所に所属して、MCやモデルの仕事もさせていただくようになりました。そんな矢先に、今度はコロナでイベントなどの仕事がゼロになってしまいました。

お世話になった事務所に負担をかけさせたくない思いもあり、退職してできることを考えて、自分のキャラクターを活かしてYou Tubeを始めることにしました。退路を断つ覚悟である程度の機材も揃え、独学で勉強して、撮影も編集も一人で行いました。コツコツでしたが、チャンネル登録者数が伸びたきっかけは、すっぴんの素顔を公開した頃からでした。見ている人にも楽しんでもらいながら「自分のままで無理せず、やりたいことはやってみよう」というメッセージになればいいと思うようになりました。「さっちゃんの動画を見て笑っていたら、悩んでいるのがバカバカしくなった」などと言ってもらえることが何より嬉しいです。

事務所勤めの頃の写真やYouTubeの動画での一コマ

たくさんつらい経験もされましたが、立ち上がる力になったのは何ですか?

周囲の皆さんに支えられたことですが、一番大きいのは母の存在かもしれません。とにかく明るくて周りの人から慕われていた人でしたが、ある日末期の肺がんであることがわかりました。「こんなにみんなに好かれる母でも、がんになってしまうなんて」とショックを受けていた私に、母は至って気丈に語りました。

「人間は皆、いつか死ぬ。病気か事故か老衰かは違っても、それがその人の寿命。だから、私が死んでも悲しまなくていい。それより死後硬直が始まったら入れ歯が入らなくて情けない死に顔になってしまうから、泣く前にとにかく入れ歯を入れてくれ」と。

以来「母さんが死んだら入れ歯」が合言葉みたいになって、本当に死に際まで家族を泣き笑いさせてくれました。母も若い頃につらい思いをたくさんしたそうですが、「なんで自分ばっかりと思わず、いつか苦労を語って誰かの励ましにする役割を担っていると思えばいい」と言っていました。だから私の体験も、少しでも誰かの力になったら、と願っています。

SACHIさんからのメッセージ

多くの人は未成年のうちは保護者の下で暮らし、成長すると子育てや介護に時間が必要な時期もあり、健康で自分のためだけに時間やお金を使える時期は限られています。それなのに「この歳でこんなファッションは恥ずかしい」「周囲の目が気になる」などと自分で自分を締め付けてしまうのは本当にもったいない。私も「いつ死ぬかわからない」と思ってから、好きなことをしてできるだけ楽しく笑って生きようと考えるようになりました。人を傷つけたり、迷惑をかけたりするのでなければ、誰もが自分らしく悔いなく毎日を楽しんでほしいと思います。

SACHI

1978年生まれ、広島在住。
YouTuber、歌手、タレント、plus-sizeモデルとして活動中。
2022年は、自ら脚本、監督、主演を務める劇場版SACHI沙智ちゃんねる『平安女子 恋のモーニングルーティン』を制作予定。

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