広島の子育て世代に向けた、医療・健康・暮らしにまつわる情報を発信

広島の病院とお医者さん探しは | ファミリードクター

  • 総合TOP >
  • インタビュー >
  • 糸賀 誠さん

「すべては患者さまのために」を合言葉に、地域の健康寿命伸延を支援|糸賀 誠さん

保険調剤薬局を「かかりつけ薬局」から、さらに「健康情報拠点」へと進化させ続けるマイライフ株式会社代表の糸賀さん。事前に写真で拝見して、やや怖そうな先入観を抱いていたものの、お会いしてみるととてもフレンドリーな応対で話しやすく、何よりお洒落でスタイルがいい! と感じました。これまでの調剤薬局という枠組みにとらわれない挑戦の原動力になっている思いを聞きました。

「すべては患者さまのために」を合言葉に、地域の健康寿命伸延を支援

事業の始まりは、いわゆる調剤薬局の開設からですか?

 もともと医薬品卸の会社で約10年間サラリーマンをやっていた時から数えると、35年くらい医薬品業界に関わっていることになります。卸の仕事をしながら、「いい薬局がない」と感じていて、「それなら自分で作ろう」と考えて33歳の時に独立しました。

インタビュー中の糸賀さん。

インタビュー中の糸賀さん。

糸賀さんが考えていた「いい薬局」とは?

まず「調剤権」を持つ薬局です。独立した頃から「医薬分業」が進み、院外処方が一般的になってきましたが、医師の指示する「処方権」の力が強く、薬局はただ処方された薬を出す場所になっていました。

しかし「かかりつけ薬局」として、患者さまが安全かつ有効な薬物療法を受けるため、お一人おひとりの健康と生活の質の向上に関わっていく上では、薬の専門家である薬剤師からの声にも耳を傾けていただく必要があります。

「いい薬局」を作るためには、薬剤師と平等の目線で信頼関係を築いていただける「いいクリニック」が欠かせないとの思いで、創業2年目には「医業経営コンサル」に取り組むようになりました。地域に「いい薬局」と「いいクリニック」があることは、何より患者さまに安心を提供できることになります。

そこでまずは地域にない医療、必要とされる医療のリサーチから始め、信頼できる先生を探し、「いいクリニック」を開いていただくことに力を注ぎました。やみくもに医療モールを作ってドクターを集めて薬局を開設するのではなく、その地域に必要な診療科を誘致する開業支援を続けました。

さらに、開業時の設計、建築、財務、労務、人材募集などの相談だけでなく、開業後の経営や法務面でのコンサルティングにも関わり、ドクターのパートナーとして、地域により良い医療環境を根付かせるお手伝いをさせていただくようになりました。

呉市中通「オールファーマシータウン」

呉市中通に誕生させた「オールファーマシータウン」は、さらにその進化形になりますか?

医・薬の両面から地域の健康支援に関わってきて、最終的に考えついたのが、事業と矛盾するようですが、「薬を必要とされない、薬を減らすための拠点づくり」です。薬局経営者の言葉とは思えないでしょう?(笑)

例えば食事。食生活の見直しで、薬を減らすことはできるんです。けれども、なかなか気軽にわかりやすい栄養指導を受けられる場所がなかったので、管理栄養士を常駐させていつでも相談できる場所を作ることにしました。

さらに話を聞いただけだけではわかりにくいので、実際に一日に必要な野菜量などを食べながら実感できる体験型カフェを作りたいと考え、タニタ食堂様とコラボして「オールカフェ×タニタカフェ」を生み出しました。

こだわったのは、〝美味しさ〟。健康志向を重視し過ぎて味気ないものになると、健康に関心のある人は足を運んでくれるかもしれないけれど、そうでない人には来てもらえない。そうではなく、日頃あまり意識していなかった人が味や雰囲気に惹かれて来て、健康に関心を持ってもらうきっかけになる、そんな場所にしたかったんです。

おかげさまで2019年4月のオープン以来、一日に必要な野菜量の半量を摂取できる彩り豊かなワンプレートランチや、カロリーや糖質を抑えながらも美味しいスイーツメニューなどが好評いただいています。

カフェメニュー

ここには他にもフィットネスや健康チェックができる「オールラボ」など、様々な施設が集約していますね

目指したのは「行動変容」を促す場所になることです。行動を変えていただくためには、まず自分の現在の身体の状態を知っていただくことからなので、体組成、血圧、血管、骨健康度などが測定できる機器を集めた「オールラボ」を設けました。

健康管理、維持向上を目指す会員組織「オール健康くらぶ」を立ち上げ、会員証として活動量計をお渡しし、毎日の歩数や消費カロリーなどの活動量を測定し、オールラボでの測定結果と合わせてアプリなどでデータ管理できるようにして、身体の変化を〝見える化〟したのです。

「オールファーマシータウン」に来ればワンストップで、定期的に自分の身体の状態を測定できるし、必要に応じて栄養指導も受けられるし、フィットネスで運動もできるし、バランスの良い食事も摂ることができます。さらに活動量等の健康行動に応じて健康ポイントを進呈し、貯めたポイントでカフェの食事券と交換できるようにしました。

こうして楽しく自身の身体に向き合える仕組みを作ったところ、会員さんの血液検査の変化に驚いたドクターから「何をされたのですか」とお問い合わせをいただいたこともありました。

オールラボ|活動量計
オールファーマシータウン設置システム「みんなのがん学校」

オールファーマシータウン設置システム「みんなのがん学校」

薬が必要になったら来る場所ではなく、薬が必要になる前に来る場所になったのですね

その通りです。現在の日本では平均寿命は伸びていても、健康寿命との開きが大きい。その差をできるだけ縮めて、最後まで元気に生活できるお手伝いをする、地域の健康を支える拠点にしていきたいと考えています。「お薬が減りましたね」と一緒に喜べる薬剤師と栄養士がいる場所です。

健康寿命を延ばすためには、先に述べたように身体の状態を知り、変化を把握し、改善に向かう生活を意識することが欠かせません。加えて必要なのは、病気に対する正しい知識を持ち、早期発見につなげることです。

特にがんは、日本人の2人に1人がかかるほど身近な病気であるのにもかかわらず、早期発見できれば不治の病ではなくなっていることも正しく知られていません。そこで「オールファーマシータウン」には、楽しくクイズに答えながら、正しいがんの知識を得て検診につなげるための「みんなのがん学校」というシステムをノバルティスファーマ(株)と共同で開発し設置しました。この内容を充実させ、全国に広げて、検診の受診率向上に貢献したいと考えています。

他にもこれから取り組みたいと考えていることがありますか?

一つは、起きている時の健康チェックだけでなく、眠っている時の健康チェックにも取り組みたいと考えています。マットレスの下に敷いて睡眠を測定する機器を手軽に利用できるようにすることで、無呼吸症候群の早期発見などに役立たせます。無呼吸症候群の治療は認知症予防にも有効と言われているので、健康寿命を延ばすことにつながります。

もう一つは、「オールファーマシータウン」のような地域の「健康情報拠点」を各地に増やすこと。現在「オール薬局」のある中国地方では、いろいろな事業者とコラボした新業態の医療モールの計画が進んでいます。その一つが、向洋駅南口 再開発エリアに2021年秋にオープン予定で、銀行のビル内にオールカフェ×タニタカフェ、健康ラボ、クリニックなどが同居し、地域住民の健康とライフプランをワンストップで支援するこれまでにない場所になります。

当社の薬局がないエリアに関しては、その地域に根ざした調剤薬局にその役割を担ってもらい、コンサルティングなどで支援し全国に広げていきたいと考えています。

オールファーマシータウンのスタッフと談笑する糸賀さん。なじみ客のように気さくに話しかけ、笑顔を引き出します。

オールファーマシータウンのスタッフと談笑する糸賀さん。なじみ客のように気さくに話しかけ、笑顔を引き出します。

糸賀さんからのメッセージ

地域の健康情報拠点を提案する自分自身がまず健康でなければならないと考え、活動量計を持ち歩く生活を始めました。毎日の歩数を意識し、ゴルフに行ってもカートを使わずどんどん歩き、野菜もしっかり摂って、「行動変容」をまさに実感しています。
そしてこうした患者さまの目線に立つことを、忘れてはならないと考えています。医療と地域を結びつける立場にある私たちだからこそできることが、まだまだたくさんあるとの思いで、一緒に健康寿命の長い地域づくりに取り組んでまいります。

糸賀 誠〈いとが まこと〉

1962年島根県生まれ。
大学卒業後、王水堂薬品㈱(現㈱エバルス)に就職し、マーケティングスペシャリストとして11年経験。
1997年に有限会社マイライフを設立し、同年9月にオール薬局 吉浦店を開局。
現在は広島、岡山、島根県に約40店舗を展開。
「すべては患者さまのために」を合言葉に、医業経営コンサルティング、在宅患者訪問薬局などの事業を手掛ける。
2019年4月呉市に「オールファーマシータウン」をオープン。
2020年「オールファーマシータウン」でのシニア層向けフレイル(虚弱)予防、及び生活習慣病予防サービスの提供が令和2年度ひろしま医療関連産業創出支援事業に採択。

トップ