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下原 千夏|インタビュー|ファミリードクター

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困りごとを抱える人と地域のコミュニケーションの場を生み出す|下原 千夏さん

困りごとを抱える人と地域のコミュニケーションの場を生み出す

多忙な日々の間を縫って、気さくな笑顔で対応してくださった下原さん。多くの重役を担う下原さんの肩書の一つが「特定非営利活動法人 FOOT&WORK」の理事長。さまざまな困りごとを抱える人が地域の人と関わり、声を掛け合いながら暮らしやすい環境づくりを支える活動を多角的に進めています。今回はそうした中から、フードバンク「ゆるティ」を中心に、その活動内容と思いを聞きました。

フードバンクのほか、認知症や障がい、引きこもりの問題を抱える方など、さまざまな支援を行っている「FOOT&WORK」ですが、そうした地域に関わる活動を始めた経緯は?

父が精神科医をしていたため、子どもの頃から精神的な障がいを抱える人と接する機会が多くありました。当時はまだ精神障がい者に対する偏見の強い時代でしたが、当たり前のように関わっていたので、そうした人たちが状態の波こそあれ、社会生活に適応できることも理解していました。 やがて時代が変わるにつれて、精神疾患を抱える人も一生入院を続けるのではなく、状態をコントロールしながら社会に復帰し、地域で生活しながら回復を図るケースが当たり前になってきました。大きな不安とストレスを抱える人たちが日常生活に戻るためには、周囲の理解が不可欠になります。心理士として患者を支えるだけでなく、地域への働きかけも必要だと考えるようになりました。

もともと「FOOT&WORK」は、認知症の高齢者が暮らすグループホームの外部評価機関として設立されたものでしたが、私が理事長の役職を引き継いでから、活動の中に「障がい福祉」の視野を取り入れました。 私がずっとテニスをしていてスポーツが好きだったので、障がい者と地域の人がスポーツを通して交流することで、お互いの心の垣根を取り除くイベントを企画することから始めました。この取組には多くのプロ選手も賛同してくださり、バスケットボール、サッカー、ゴルフなど、いろいろ実施してきました。

「FOOT&WORK」のスポーツイベントを通じての様々な交流

フードバンク事業を始めるきっかけは?

認知症の患者やその家族の支援に関わっているうちに、認知症カフェを運営する人たちが、お茶やお菓子代を持ち出しすることも多くて大変そうだから、フードバンクを設立して支援したらどうかという意見がスタッフから出てきました。

調べたら安佐北区にフードバンク事業を行っている団体があったため、早速お話を聞きに伺いました。広島県内にはそこと福山にしかフードバンクがなく、呉方面から可部まで食品の受け取りに来られる方もいることも知りました。仕組みやニーズなどを聞いて、うちでも立ち上げ可能と判断できたので、広島市の南東エリアの市町で必要としている人の役に立てるのではないかと考えて、フードバンク「ゆるティ」を開設しました。

フードバンク「ゆるティ」のスタッフと。中央が下原さん

フードバンクはどのような仕組みですか?

フードバンクとは、賞味期限内で安全に食べられるのに、箱が壊れたり印字ミスなどの理由で販売できない食品を企業や農家から寄贈してもらい、支援を必要としている福祉施設や団体に無償で提供する活動です。廃棄される食品を有効活用するため、社会問題でもある「食品ロス」の改善に役立つという利点にもつながります。生活に困難さを抱えている方々への支援と食品ロス対策を同時に実現する、人と環境に優しい活動と言えますね。

「ゆるティ」では、広島市安芸区・安芸郡府中町・海田町・熊野町・坂町などの「安芸地区」を発信源に、地元の食品関連企業やスーパーマーケット、農家等の協力をいただくことになりました。また地域のことは地域の人でないとわからないので、エリアの社会福祉協議会と連携して、支援の必要な人に的確に食品を届けるマッチングを図ることにしました。

縦割りでは支援が難しい広島市安芸区・安芸郡府中町・海田町・熊野町・坂町などの自治体を横断したエリアで活動できるのがNPO法人ならではの強みだと考えています。

協力団体から届けられた食品

入荷した品物のチェック、在庫管理、各地域への仕分けは大変な作業ですが、スタッフさんたちが協力しててきぱきとこなします

活動を始めてみて気付いたことがありますか?

準備を進めている2018年の夏に西日本豪雨を経験し、災害時用の食品の備蓄としてもフードバンクの必要性を痛感しました。その後、活動を始めて軌道に乗ってきた時にコロナ禍を体験しました。通常の活動が難しくなる一方で、「何でもいいから食べ物を分けていただけませんか」という個人の方からの問い合せが増え、対応を悩みつつ、できる限りの要望に応えるようにしました。

人はまずお腹を満たすことができないと、生活を好転させるための次の一歩を踏み出すことができません。しかし特に子どもたちには、さらに次の一歩、毎日口に入れるものをきちんと作って食べていく大切さも知ってほしいと思うのです。これは食生活が心身に大きな影響を与えることを知っている、心理士の立場からの切実な願いでもあります。

フードバンクで寄付していただいた食品等を活用し、支援を必要とする方々が安心して集う場所として、こども食堂「ノイエ」を開設しました(現在は休止中)。そうした活動の場で、「食育」の一助も担っていきたいと考えています。

子どもが一人でも入れて、みんなで一緒にあたたかい食を囲む こども食堂「ノイエ」

ある日のメニュー。「ノイエ」の合言葉は、地元で生まれて地元で生活する「地産地生」

今後の展望があれば聞かせてください

他に「FOOT&WORK」の活動としては、主に自立を目指す精神障がい、知的障がいをお持ちの方に生活能力向上のために必要な訓練・支援を行う自立訓練(生活訓練)事業所「LARGO(ラルゴ)」を運営しています。

さらに海田町からの受託で、さまざまな生活の困りごとについて包括的に支援する「海田町くらしの安心サポートセンター」と、「海田町ひきこもり相談支援センターなないろ」での支援も始めました。

今後は、アルコール、薬物、ギャンブルなどの依存症の人の支援にも力を入れたいと考えているし、それらのさまざまな困りごとを統括して、相談窓口とマッチングが手軽に行えるポータルサイトも設立したいと考えています。

地域で困っている人を地域で支え合い、必要な支援が行き届く町づくりに、これからも取り組んでいきたいと思います。

下原さんからのメッセージ

障がいを問わず、年齢を問わず、性別を問わず、皆が理解し合い、協力しあい、支え合うコミュニティの創造に向けて、これからも多様な方々がつながる場やイベントなどの「コミュニケーションの場」を創造していきます。

その活動を一緒に支えてくれるボランティアスタッフおよび、目的にご賛同いただける正会員を募集しています。またフードバンクの協賛企業も募集しています。ご協力をよろしくお願い致します。

■食品寄付についてのお問い合わせ
 フードバンク「ゆるティ」 TEL:082-554-6393(受付時間:月〜金曜日/午前9時〜16時30分)

下原 千夏(しもはら ちか)

広島生まれ、広島育ち、生粋の広島っ子。
家族は夫一人、息子一人、ミニチュアシュナウザー1匹。中学校から大学までの約10年間、テニス部に所属。1994年頃から実父が理事長を務めていた医療法人で、心理士の仕事に携わり、2000年から生活訓練施設(現障害者グループホーム)の施設長。2006年に同医療法人副理事長、2014年に理事長に就任。2018年からは特定非営利活動法人FOOT&WORKの理事長を務める。コメディカルとしての現場経験を活かし、FOOT&WORKでは障がい者スポーツのイベント開催や、「地域でこんなのがあったらいいなー」という思いを存分に込めて、障害を問わず、性別を問わず、年齢を問わず、人種を問わず、皆が理解し、支え合う事が出来る共生社会を目指した活動を実行中。

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