日本は災害大国と呼ばれ、今までにも多くの自然災害に見舞われてきました。
災害時に活躍する医療職は、医師や看護師だけではありません。
実は、理学療法士も災害時には被災地の行政や他職種と連携して支援活動を行います。
今回は、理学療法士として災害時に知っておいていただきたいポイントや対策をまとめています。
災害時の理学療法士の主な役割は健康維持です。
今まで通っていた施設が利用できず、避難所での生活を余儀なくされると活動の機会が損なわれてしまいます。
そのため理学療法士は、被災された障がい者や高齢者の活動性の維持・改善を目的に支援活動を行っていきます。
避難所生活が長期に及ぶと「エコノミークラス症候群」に注意が必要です。
エコノミークラス症候群は、飛行機の座席などに長時間座り同じ姿勢で動かないでいることで発症します。
エコノミークラス症候群になると血行不良が起こるため、血液が固まりやすい状態となり、深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症を誘発する恐れがあります。
特に肺血栓塞栓症は、災害関連死の一つとして注目されている疾患です。
エコノミークラス症候群になりやすい方には、高齢の方や、血管に障害を持っている方、ガン患者の方などが挙げられます。
また、妊娠中の方や出産後の方も発症リスクが高くなります。
しかし、長時間同じ姿勢を取ると健康な方でも発症する可能性はあるので、被災された全ての方に注意が必要です。
エコノミークラス症候群を早期発見するためには、小さな体調不良に気付くことが大切です。
エコノミークラス症候群の現れる場所や重症度には個人差があります。
主に足の症状と肺の症状が現れますが、どちらか片方だけの場合と両方の症状が現れる場合があるので覚えておいてください。
以下の症状が片足に出やすいことが特徴です。
エコノミークラス症候群にならないためには、予防が重要です。
脱水がエコノミークラス症候群を引き起こしやすくなるため、定期的に水を飲むことで予防できます。
特に被災中の女性はトイレの問題から水分を我慢する傾向にあります。
水分を取らなければ血液が濃縮され、血栓ができやすくなるため、こまめに水分を取るようにしてください。
また、弾性靴下やストッキングを着用することで足に圧迫を与え、血栓をできにくくする効果が期待できます。
医療用の商品であれば効果が高いと思われますが、市販のある程度の圧がかかる商品でも予防効果が期待できるので準備しておくと安心です。
エコノミークラス症候群にならないためには、長時間同じ姿勢にならないことと、運動をすることが大切です。
以下に避難場所でも簡単に行える運動を紹介していきます。
エコノミークラス症候群を予防するには、血栓が生じやすいふくらはぎのストレッチを行うことが効果的です。
しかし、すでに血栓ができている可能性のある方は、すぐに医療機関を受診してください。
避難所生活では大きく体を動かせない場合もあります。
運動するスペースが確保できない場合でも、少ないスペースで行える運動を紹介します。
これらの運動はいつでも簡単に行うことができるので、こまめに実践してください。
日本人ならば一度はしたことのあるラジオ体操もオススメです。
ラジオ体操は呼吸機能を保つ効果や、骨粗鬆症の予防にも効果が期待できます。
また「ラジオ体操を継続している方は心身状態を良好に保っている」という報告もあるため、体の健康も心の健康も維持することができます。
ラジオ体操は、小学生から高齢の方までどなたでも簡単に行うことができる点もメリットです
私たちもいつ災害に見舞われるかは分かりません。
いざという時に、大切な家族を守ることができるよう、誰もが「エコノミークラス症候群」を発症するリスクがある事を覚えておいてください。
エコノミークラス症候群以外にも、被災した際には感染症や、精神面のケアにも配慮しなければなりません。
知識があれば被災した際にも落ち着いて行動することができます。
非常食などの準備の他に、事前に必要な情報を集めておくことも災害対策の一つになります。
本業では約10年間、病院での理学療法士業務を経験し、現在はデイサービスで機能訓練指導員として働いています。 プライベートでは、小学2年生と3歳の兄弟の子育てに日々奮闘しながら、ライターとしても活躍中です。