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コロナ患者さんの対応と看護師の心情

コロナ患者さんの対応と看護師の心情

2022.12.14

最近はまたコロナウイルスの感染が再拡大してきています。

ここ3年、同じことの繰り返しでコロナウイルスへの意識が薄まりつつある現状です。

しかし、そのギャップを埋めるように病院の中は忙しさを増しています。

今回はニュースで見る病院の様子だけでは伝わらない、コロナウイルスによって疲弊している患者さんと、葛藤している看護師の様子についてコロナ対応をした経験を元にリアルにご紹介していきます。

コロナ患者さんの対応

まずはコロナ患者さんの対応についてご紹介します。

まず感染が判明した患者さんは個室で生活していただきます。

感染対策のため部屋から出ることはできず、必要最低限の対応は看護師が行っています。

《知って欲しい!対応6つ》

①医療者は個人防護具を着用する

感染対策のため個人防護具を着用します。

しかし、これが意外と時間がかかるのです。

白衣のポケットにあるペンや聴診器などの物品を全て出し、手袋から帽子を着終えるまで鏡を見ながら着用します。

防護具を着用するのには体感3〜5分程度です。

そのため、患者さんからは「ナースコールしても全然来ない」と思われていることもあります。

医療者、他の患者さんの身を守るためにも丁寧に個人防護具を着用する必要があるため、対応までに時間がかかるのです。

②患者さんとは必要最低限の関わり

コロナウイルス陽性の患者さんとは必要最低限の関わりになってしまいます。

患者さんにとっては看護師が唯一の対面して話せる相手です。

そのため、体調だけでなく精神的な面の話もしてくださいます。

本当は患者さんに寄り添い、ゆっくりと話を聞く時間が欲しいです。

ですが、看護師も自分の身を守るためにも短時間での対応をしなければいけないのです。

③食事はプラスチック容器を使用

患者さんにはコンビニのお弁当のようなプラスチックの容器に入った食事を配膳します。

なぜなら、普段使用する食器を使うと洗うことができないからです。

ただ普段の容器に比べると保温力がなく、看護師も個人防護具を着用すると、手袋の厚さから食事の温度が分かりにくいこともあります。

そのため、配膳した時にはぬるくなっていることも・・。

一度容器を持って入ると外には出せないので、申し訳なくそのまま食べていただくこともありました。

④トイレは個室に設備されているトイレ、もしくはポータブルトイレにしていただく

トイレは個室のトイレもしくはポータブルトイレを使用していただきます。

ポータブルトイレはバケツに排せつ物がたまるようになっているので流すことができません。

看護師が訪室して片付けを行いますが、それまでの期間は臭いが気になりますし、

片付けてもらう時には申し訳なさを感じる方もおられます。

普段は自分でトイレに行けているのに、人にトイレのお世話をしてもらうことに罪悪感や羞恥心を感じ精神的なダメージとなることもあります。

⑤問診はナースコール越しに行う

問診はナースコールで行うこともあります。

普段であれば訪室して体調を訊ねますが、少しした体調確認や伝言であればナースコール越しに会話をします。

必要最低限の関わりとなるため、先生もナースコールで問診しているのです。

そのため、直接入って検温した時にしっかりと全身状態を観察しておくのが看護師の役割でもあります。

⑥万全にできない転倒予防

認知症の患者さんでは、足の筋力が低下していても自力で動こうとされる方もいらっしゃいます。

また、自分がコロナウイルスに感染していることが分からず廊下に出てこようとされることもあります。

しかし、そこですぐに対応できないのがコロナウィルス対策の仕方がないところです。

必要最低限の訪室のため、転けそうになってもすぐに駆けつけることができません。

また、もしも転けてしまったとしてもゆっくり対応することになります。

センサーをつけて対応したり、監視できるモニターを設置したり、最悪の場合はナースコールで患者さんを呼び止めたりします。

コロナ対応をしている看護師が感じること

コロナウイルスに感染した患者さんは普段と変わった生活を送ることになります。

昨日までは自由に外に出ていたのに、感染が確認されたら個室から出ることはできません。

自由に活動できなくなるストレスと、コロナウイルスによる症状でとても疲弊しています。

電話を持っている方はご家族と話をすることもできますが、持っていない方は看護師が傾聴します。

①もっと早く家族と会わせてあげたかった

コロナウィルスに感染して、もともと元気だった方が亡くなることもあります。

ただ、いつ意識が無くなるか、いつ話せなくなるのか、そのタイミングは分かりません。

「家族にもう一度会いたい」と言っていた患者さん。お孫さんの話を笑いながら話していた患者さんの容態が変わった時、もっと早く家族と会わせてあげたかった。と思うのです。

②もっと早く退院させてあげたかった

患者さんが1日でも早く退院できればよかった。

1日早ければクラスターに巻き込まれなかった。
濃厚接触者として、隔離されることもなかったのに。

などと、感染を防げなかったのは私たちスタッフの責任なのに、目に見えないウイルスに負けたことへの悔しさと申し訳なさで一杯になることもありました。

退院直前にクラスターが発生した際、対応できる個室の数が足りず4人部屋で、外の空気も吸えない環境で過ごされている方もおられました。

「ありがとね、申し訳ないね」
と涙ぐみながら話される方もいれば

「いつになったら出られる?
コロナを移したのは病院なのに」
などと行き場のない怒りを表出される方もいらっしゃいました。

そのような患者さん達の話をただ聴いて、謝罪をすることしかできない自分にもどかしさを感じました。

まとめ

コロナウィルス対策に目が向きがちですが、

こうして患者さんの反応をみていると、感染対策と同じくらい目に見えない心の問題の深さを知ることができます。

まだまだ続くコロナウィルスとの戦いに、大事なものを見失わないようにしたいものです。

この記事のライター

まゆ

はじめまして。 消化器内科で病棟看護師として働いているまゆと申します。 看護師3年目となり、病院以外の場所で社会貢献できるような発信をしていきたいと思い執筆を始めました。 皆様に看護師のことを知って頂いたり、医療に興味を持っていただけるような記事を作成していきたいと思っております。 よろしくお願いいたします!

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