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俳優のトム・クルーズや映画監督のスティーブン・スピルバーグは、「発達性読み書き障害」であることを公表しています。他にもスウェーデン国王のカール16世グスタフやバージンアトランティック航空の社長などもよく知られています。知的な遅れはなく、会話のやり取りも課題はなく、むしろ人並み以上にスピーチ力がある人も多くいます。しかし、通常の努力では文字の読み書きなどに困難を抱えています。なぜか勉強ができないと思われています。
一般的には、年長児にもなればひらがなを読めるようになります。データでは就学前11月時点で93%がひらがなを読めるとされています。
しかし、ひらがなを完璧に書けない小中学生は実際にいます。直前に努力をして、漢字テストで10問中10問書けた。しかし、2週間もすると同じ漢字が5問も書けなくなってしまう。声を出して音読はできる。しかし、読むスピードが遅い。練習しても早くはならない。板書された文字をノートに書けない。書けたとしてもとんでもなく時間がかかる。やがては書かなくなってしまう。彼らは周囲から「怠け者」「努力不足」などと誤解されることが少なくない。親さえも本人の努力不足と決めつけて、無理やり書かそうとする。
原因は、本人の努力不足ではなく神経生物学的な障害だったのです。にもかかわらず、障害の内容が社会にあまり知られておらず、苦しめられている事例が後を絶ちません。そこで、今回は「発達性読み書き障害」について解説します。
発達性読み書き障害は、Developmental Dyslexia(デベロップメンタル ディスレクシア)の日本語訳です。交通事故などで脳損傷を起こして文字の読み書きに障害が生じる後天性のものと区別する意味で「発達性」と言います。いわゆる「生まれつき」の障害であるというところが一つ目のポイントとなります。したがって、親のしつけや本人の努力不足が原因ではないわけです。
もう一つのポイントは、「読み」と「書き」の障害であるという点です。「読み」の障害なのか「書き」の障害なのか、また「読み」と「書き」の両方の障害なのかを明確にとらえる必要があるわけです。そして、3つ目のポイントが「障害」の中身です。これは明確です。「正確さ」と「流暢さ」に困難があることが「障害」の中身となります。したがって、私たち臨床家は「文字の読み書き」について「きちんと正確に読んだり書けたりできるか」という観点と「スラスラ流暢に読んだり書けたりできるか」について検討することになるわけです。
ここに「発達性読み書き障害」の定義を載せておきます。
なかなか、読みにくい定義ですがざっくばらんに説明すると「生まれつき」というのを「神経生物学的に起因する」と言っていると思ってください。そして、「文字を音にして読む」というのを「音韻化」と言っています。そして、「文字を頭で音にしてその音に該当する文字を思い出すこと」を「音韻に対応する文字の想起」と言っているのです。そして、読み書きできない原因が目や耳の機能として視力や聴力の弱さが原因ではないと言っているのです。
実は、英語を話す人よりも日本語を話す人の方が「発達性読み書き障害」はぐっと少なくなります。英語は「文字」と「音」がきっちりと対応しないものがたくさんあります。「アップルコンピュータ―」の「apple」の「a」は「ア」、「エイプリルフール」の「april」の「a」は「エイ」と発音します。このように、英語は、「文字」と「音」の対応が極めて困難なのです。
その関係もあり、英語圏では10%以上が「読み書き障害」と報告されています。すなわち、10人に1人いることになります。かなりの数です。「読み」障害だけの症例はほとんどありません。したがって、「読み書き」の障害の報告と考えてください。
続いて日本語の「読み書き障害」の報告についてです。日本語は、英語と違って「あ」は音でも「/ア/」だし「い」も「/イ/」で文字と音の対応が明確です。したがって、「読み書き障害」は実は英語圏より少ないのです。たとえ、日本語というのは、ひらがながあって、カタカナもあって、漢字もあるのに・・・・・。日本語の読み書き障害は英語圏より少ないのです。「読み書き障害」が「音」の問題と大きく関係しているのがここからもわかります。
筑波大学の宇野彰先生によると次の報告があります。
つまり、100人中3人くらいは教科書をスラスラ読めないということになります。そして、40人の通常学級で3人くらいは漢字の読み書きが困難であるということになります。
小・中学生の自殺の原因の1位は、学業不振です。また、発達段階が上がると、進路の悩みやうつ病の比重が高くなってきます。高校生では「進路の悩み」がトップですが、2位はやはり、「学業不振」です。大学生でも「学業不振」が最も多く、全体の2割近くを占めます。日本の大学生は遊びほうけて勉強しないといいますが、深刻に考える学生さんもいるようです。
私は、小中学生や高校生の相談を多く受けます。その中で「学業不振」で悩んでいる児童生徒を多く見かけます。その中に少なからず、実は「読み書き障害」を抱えている子どもたちがいるのではないかと考えています。
「読み書き障害」の早期発見と早期対応は自殺予防にも効果が発揮されるのではないでしょうか。
ここからが重要な提案になります。
「読み書き障害」というのは「知的な遅れがない」ということをはじめに言いました。すなわち、「文字」を「音」に変換するのが困難なだけなのです。だから、読めない。したがって、例えば代わりに誰かが読めばいい。実は、意味は理解できるケースがほとんどです。「意味理解」について、障害はないのです。問題文を「代読」すれば、答えは浮かぶ。
そして、紙に鉛筆で文字が書けないだけです。これも「音」を「文字」に変換できないだけです。何を書くかの意味は理解できているのです。したがって、キーボード入力は可能です。パソコンや“iPad”を使えば答えは書ける。
これからの仕事や日々の営みは紙に鉛筆というより、「メモはスマホで」、「文章はパソコンで」が一般的です。ということは、これで何の問題もないわけです。
「代読」と言っても、いちいち他人がその人ひとりにつけないなんて言う意見もあります。だとしたら、「読み上げソフト」を使えばいいわけです。他の子どもの邪魔になるなら「ヘッドフォン」「イヤフォン」を使えばいい。
重要なのは、一刻も早く「支援」を行うことなのです。「支援」も無理のない範囲でよいのです。そのためには「読み書き障害」を早期発見して早期対応をすることが重要となります。こういう支援の配慮を「合理的配慮」と言います。「合理的配慮」は保護者の要請を受けて学校との建設的対話で行うことになっています。したがって、学校任せではいけません。親が我が子の悩みを発見して提案しなければいけないのです。
子どもの未来を見据えて、悩みに寄り添いながら適切な支援を開始してほしいと願っています
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