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アトピー性皮膚炎の治療について

2020/05/12

アトピー性皮膚炎は湿疹が慢性的に続くため、まずはステロイド外用薬を中心としてた治療を行い、“湿疹で日常生活に困らないように”皮膚炎をコントールしていきます。

そして、その先に保湿剤を中心とした治療へシフトしていくようにします。一人一人の患者さんごとに生活スタイルやアトピー性皮膚炎の悪化因子が異なるので、それらを加味して治療計画を立てていきます。

プロアクティブ療法について

アトピー性皮膚炎では、一旦症状が改善しても、また繰り返すことがあります。患者さんの中にも、湿疹がぶり返してきたら皮膚科を受診するといったケースもあるかと思います。アトピー性皮膚炎と上手く付き合っていくためには、出来るだけ、ぶり返しのない治療経過が望ましいと言えます。

では、具体的にどう治療するのかというと、悪化した皮膚炎に対しては、まずしっかりとステロイド外用薬を中心とした治療を行い(塗り方については「Vol.2:ステロイド外用薬を知ろう」参照)、速やかに改善させます。その後も皮膚炎をぶり返させないために、軽快した後も、すぐにステロイド外用薬を塗るのを止めず、定期的(1日間隔や週2回など)に治療薬を塗って良い状態を維持することを目指します。なお、アトピー性皮膚炎は乾燥肌がベースになるので保湿薬は毎日塗ります。これが、プロアクティブ療法という治療の考え方で、皮膚炎の悪化の波を作らせないことを目指したものです。なお、“プロアクティブ(proactive)”とは“先を見越した”という意味の英語で、この治療コンセプトをうまく表現しています。

  • くり返す例

  • 経過の良い例

TARCについて

プロアクティブ療法を上手く行うために、皮膚科医が参考にしている血液マーカー(検査の項目)があります。それは“TARC”というもので、湿疹が悪化しているときは数値が増えて、改善すると下がります。このTARCは皮膚炎の発生にも関与しており、血液検査で調べることができます(詳しくは次回にて)。つまりTARCを調べることで皮膚の下でどの程度湿疹が残っているかが数値でわかるようになります。皮膚の状態とTARCを見ながら図のようにプロアクティブ治療を進めていきます。

全身治療について

塗り薬による治療を行っても、かゆみが続き、皮膚炎がうまく沈静化できないこともあります。その場合には、全身療法の出番です。原稿を書いている現在(令和2年)、全身療法に使われるのは、❶飲み薬(ネオーラル®︎)と❷注射(デュピクセント®︎)の2つがあります。

それぞれについて詳しく説明すると、

❶飲み薬(ネオーラル®︎、一般名:シクロスポリン)

免疫抑制剤の飲み薬になります。”免疫抑制剤?”と聞くと大変恐ろしい印象を受けるかも知れません。実際に臓器移植の拒絶反応を抑制するために使われる薬ではあるのですが、アトピー性皮膚炎に使う量はそれらよりはずいぶん少ない量になります。

シクロスポリンは皮膚に集まっている皮膚炎を起こしている細胞を沈静化(つまり免疫を抑制することになります)させ、皮膚炎を改善させます。診療の経験上、かゆみも一緒に改善することが多いです。アトピー性皮膚炎以外にも、尋常性乾癬など他の皮膚病の治療にも使われます。

ただし、薬の副作用として免疫抑制はもちろん、腎機能障害や高血圧などがあるため、用法・用量を守り適切に使う必要があります。

❷注射(デュピクセント®︎、一般名:デュピルマブ)

アトピー性皮膚炎では、皮膚炎の悪化にIL-4(インターロイキン4)という物質が関係しています。この物質を直接ブロックすることで、皮膚のバリア機能やかゆみ、皮膚の炎症を改善させます。これまでの治療と違い、原因物質をターゲットとした新しい治療になります。2週間に1回の皮膚への注射が必要で、自宅での注射(在宅自己注射)も可能です。

ただし、この注射薬はきちんと皮膚科で塗り薬による治療を適切に受けた上でしか使用できません。(※ステロイド外用薬などの塗り薬を使わずに、注射のみで治療するということは出来ません。)

プロトピック軟膏とは?

Vol.2:ステロイド外用薬を知ろう」ではステロイド外用薬の事を多く述べてきましたが、アトピー性皮膚炎にはもうひとつ塗り薬があります(令和2年時点)。それは、プロトピック軟膏という免疫抑制薬の塗り薬になります。先ほど述べた飲み薬の塗り薬版です。ヒリヒリとした刺激感・ほてりがありますが、皮膚炎の改善とともにこれらも軽減されます。ステロイド外用薬でいうと、Ⅲ〜Ⅳ群(ストロング〜ミディアム)の強さに相当します。ステロイド外用薬と違い、長期に使用しても皮膚の菲薄化(=うすくなる)はほとんどありません。

新しい薬について

今回紹介した薬以外にも、JAK阻害薬などの新しいタイプの薬がアトピー性皮膚炎の治療として近々登場してくる予定です。また、デュピクセントのような皮膚の免疫をターゲットとした治療薬の開発も進んでおり、今後はさらに治療の選択肢が増えることが期待されています。

 コラムニスト紹介

岩本皮ふ科アレルギー科 院長  岩本 和真 


 当クリニックでは、湿疹、水虫をはじめ、乾癬(かんせん)、やけど、皮膚ガンなど幅広い皮膚科診療を行っております。専門は、アトピー性皮膚炎、じんま疹などのアレルギー性皮膚疾患で、ドイツBonn大学ではアトピー性皮膚炎の世界的リーダーであるThomas Bieber教授のもとで研鑽をつんで参りました。また、広島大学病院では血管性浮腫をはじめ遺伝性血管性浮腫という難病の診療にも携わってきました。
 これらの経験を生かし、丁寧な説明と適切な治療を心がけ、地域の皆様のお役に立てる皮ふ科クリニックとして診療いたします。ちょっとした皮膚の気になることを、お気軽にご相談ください。

【経歴・資格・所属学会】
【略歴】
修道中学・高校卒業
2004年 広島大学医学部卒業
2004年 JA広島総合病院(研修医)
2006年 広島大学病院皮膚科
2012年 ドイツBonn大学皮膚科
2015年 広島大学病院皮膚科
2020年 岩本皮ふ科アレルギー科
(※1983年設立「岩本医院」を承継・名称変更)

【資格】
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
医学博士
難病指定医・小児慢性特定疾病指定医

【所属学会】
日本皮膚科学会
日本アレルギー学会
日本臨床皮膚科学会

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