今回は食事に関する癖(食習慣)について、書いてみたいと思います。
考えてみたら、『生活習慣病』というのは、各人の生活習慣の良くない習慣がもたらした疾病であるわけで、言ってみれば食事に関する癖がその人に肥満をもたらしていたり、塩分過多で高血圧をもたらしていたりしないだろうか?
人類の長い歴史の中でも、今ほど食生活が豊かで食べたいものが簡単に手に入る時代はなかったでしょう。もっともこの時代でも、広い地球上では、未だに今日一皿の食事ができなくて、栄養失調に苦しむ人たちがいる事も確かです。
しかし我々の国では、災害などの特別なことがない限り、お金さえ払えば誰でもが簡単に食べたいものを手に入れることができます。 ほんの少し前まで(少なくとも私が子供のころまでは)食糧事情の悪い時代でした。それこそ親が用意してくれた食べ物を必ず両手を合わせて「いただきます」と感謝をし、好き嫌いを言うなんて考えられませんでした。苦手な食物を『苦手』と言うこともできませんでした。
偏食や不規則など食事の癖をうまくコントロールできれば、ひょっとしたら肥満が解消できるかもしれません。生活習慣病のリスクが減らせるかもしれません。 今まで、食に関する体の仕組みを書いてきましたが、どれも人が食糧を得ることができなくなった時になんとか生きながらえるための仕組みでした。現在のような豊かな食環境の中では、気の向くままに食べていたのでは太ってしまいます。偏った食べ方をすることで病気になってしまいます。
食事指導をさせていただく時、いろいろな食行動の癖をお聞きします。『その習慣は何とかしたほうが良いよ』と思うこともたくさんあります。しかし、当人は「ずっとそうしてきたから」と偏っていることに気がついていません。
どれも一般的な癖(習慣)です。常軌を逸するようなドカ食いや、絶えず何か食べていたり、また、食べては吐いたりという類のことは摂食障害の範疇に入ることだと思います。 どうでしょうか?いくつか思い当たることがある方もいらっしゃると思います。
前述の食習慣は健康にとって良くない習慣です。では健康にとってプラスになる習慣というのはどんなものがあるでしょうか? これは国立がん研究センターが2015年に『今後10年に癌に罹るリスクをウェブで自己チェック』の中で、『がんを遠ざける5つの健康習慣とは』として発表しているもので、これによると今までの研究結果から、がんを予防できる生活習慣として次の5つを挙げています。
喫煙は多くのがんの発生リスクを上げることが分かっています。吸っている人は禁煙しましょう。吸わない人も、他の人の吸う、煙草の煙を避けるようにしましょう。喫煙はがんだけでなく、様々な重大な疾患のリスクに繋がります。20年以上の禁煙で非喫煙状態と同等までがんのリスクが低下するとの報告も多数ありますので、吸っている場合は少しでも長く禁煙する心がけが大切です。
お酒をエタノール量に換算した場合、週あたり150グラム未満の酒量に抑えるのが良いでしょう。 例えば、日本酒1合はエタノール量に換算して23グラムです。毎日、日本酒を1合飲めば1週間で摂取するエタノール量は161グラムになります。
塩分のとり過ぎによって、高血圧などの重大な疾患の引き金となる症状が起こることは、広く知られています。がん予防の観点からは、特に塩分の高い塩蔵品(たらこ、すじこ等)の摂取を1週間に1回未満にすると良いという研究結果が出ています。
1日あたりの身体活動が〈男性 37.5メッツ・時以上〉〈女性 31.9メッツ・時以上〉の人が、がんのリスクが低いという研究結果が出ました。(メッツは「Metabolic equivalents」の略で、安静状態を1して活動・運動を行った時に安静状態の何倍の代謝(カロリー消費)をしているかを表しています)
肥満度の指標となるBMI(Body Ⅿass 1ndex)は以下の式で計算できます。
BMI値=体重(キログラム)/身長(メートル)²
男性 21以上から27未満
女性 19以上から25未満
体重は、上記BMIの範囲内にあるよう、管理しましょう。
※最近の『日本人のためのがん予防法』では、中高年女性のBMI値は最新の研究から21以上から25未満が推奨されています。
「なんだ、悪い習慣だったものを直せば良い習慣になるんだ!」と、なんと簡単に『健康』が手に入るような気がしませんか?
次回は悪い習慣を良い習慣にできるようにひとつづつ考えてみたいと思います。
長年、管理栄養士として病院の給食管理・栄養管理に従事後、現在、内科糖尿病専門医院にて糖尿病を中心とする生活習慣病、高齢者の低栄養等の栄養食事指導をしています。
ライフワークとして「あなたの体は、あなたの食べたものでできている」ということを意識した「食」の啓発活動を行なっています。
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