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肥満っていけないこと?

2020/06/17

前回、見た目を気にするフランス人がコロナ禍で、「平均2.5kg太ったらしい」という記事について書きました。

そこで同じように動かなくなって体重が気になるという方も多いのではないかと思い、今回も肥満について書いてみたいと思います。

そもそも肥満ってどういう事でしょうか?

「肥満」とは脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、体格指数であるBMI(Body Mass Indexの略で、体重と身長の関係から算出される人の肥満度を表す体格指数です)25以上の場合はBMI値によって肥満度が1~4に分類されて、BMI35以上は高度肥満と定義されます。しかし、BMIは身長と体重のみから計算された数値であるため、この数値のみでは、筋肉量が多いのか脂肪量が多いのかわかりません。逆に、BMIが標準内であっても筋肉や骨よりも脂肪の重さが多い人もおり、隠れ肥満と言ったりします。体脂肪率では男性15~20%、女性20~25%が標準、男性25%以上、女性30%以上が肥満と判定されます。 では肥満っていけない事なのでしょうか?

テレビを見ていると太ってコロコロして「かわいいなあ」と思う人もいれば、「もう少しなんとかならないのかしら?」と思う人がいます。見た目だけなら「好みによって好き好きで良いですよ」と言っても良いのですが、身体のどこに脂肪がつくかによって、健康障害のリスクが変わってきます。ブラウン管の中の人ですからこちらも無責任に、「あーあんなに脂肪がついていたのでは近い将来危ないなあ」とつぶやくこともしばしばです。若いうちなら何とかなっても40歳を超えるとなあ・・・・。 職業病でしょうか? 通勤途中の人を見ても数値が気になります。

肥満でも脂肪のつき方によってリスクが違います! 肥満症は病気です。

下半身中心に脂肪がつく皮下脂肪型肥満よりも、腹囲に脂肪がつく内臓脂肪型肥満では、高血圧・糖尿病・脂質代謝異常などの生活習慣病を発症するリスクが高くなります。BMI25以上では、肥満によって、もしくは肥満に関連して健康障害を合併する場合、または、健康障害を伴いやすいリスクが高い肥満(内臓脂肪型肥満)は、医学的に減量を必要とする病態で疾患として取り扱われ、肥満症と呼ばれます。

BMI=体重(kg)/身長(m)2
肥満度分類 (日本肥満学会)
BMI(kg/㎡) 判定 WHO基準
<18.5 低体重 Underweight
18.5≦~<25 普通体重 Normal range
25≦~<30 肥満(1度) Pre-obese
30≦~<35 肥満(2度) Obese classⅠ
35≦~<40 肥満(3度) Obese classⅡ
40≦ 肥満(4度) Obese classⅢ

私の勤務するクリニックでも肥満度1程度の糖尿病患者さんが目につきます。昔は日本人の糖尿病患者は太っていないというのが定番のようでした。また、昔はめったにお会いしなかった100キロ越えの肥満度3クラスの方もちょくちょくお会いします。

BMIは身長と体重から単純に計算された値ですので、体重が多いのが筋肉によるものなのか脂肪が多いのか確かではありません。体脂肪率を測れる体重計も市販されていますが、機種によって、推定方法や判定基準が異なる場合がありますので、一応の目安として測定値の増減を日々の健康管理の目安として把握しておきましょう。

最近、細そうに見える女性に体脂肪率が高い状態(隠れ肥満)が多くみられます。また、どこに脂肪がつくのかによって、健康への危険性が違ってきます。筋肉の内側の腹腔内に脂肪が多く蓄積する「内臓脂肪型肥満(リンゴ型肥満)」の人は、糖尿病・高血圧・脂質代謝異常などを発症する確率が高くなります。一方、腰回りや太ももなど下半身を中心に』皮下脂肪が多く溜まっている者は内臓脂肪は少なく、「皮下脂肪型肥満(洋ナシ型肥満)」と呼ばれ、前記のような症状はあまりみられません。

肥満の原因と対策

厚生労働省のホームページを開くと生活習慣病の様々な原因が書いてありますが、中でも肥満が原因の一つとしてあげられることが少なくありません。

脳卒中(原因:高血圧・糖尿病・心臓病・脂質異常症・喫煙)

肥満に関連 高血圧 高血圧は肥満を防ぐことも予防となります。
糖尿病 糖尿病は肥満を防ぐことが最大の予防になります。
心臓病 4大危険因子(高血圧・脂質異常症・喫煙・高血糖)をなくすこと。
脂質異常症 食事のコントロールと適度な運動が必要。

こう見ただけでも、肥満は重要な疾病をもたらしているようです。太らない方が良さそうだという事は分かっていただけたと思います。 では肥満しないようにするにはどうすれば良いでしょうか?

肥満の原因は消費エネルギー以上に摂取エネルギーが多いことが一番の原因です。肥満を少しでも解消するには、余分に食べていた食物の適正化を図る必要があります。そして、運動をすることで、筋肉を増やし、基礎代謝量を増やし体脂肪が燃えやすい体を作ることです。
家にいる時間が増えたという方もいらっしゃることでしょう。 日頃の食事を少し見直してみませんか?

今太ってしまったという方は、露出の多くなる夏に向けてちょっと頑張ってみましょう!

肥満解消のための食事のポイント

  1. 1日3食規則正しく食べる
    時間が等間隔にあいていると血糖の急上昇も抑えられ、脂肪も溜まりにくくなります。時間があき過ぎると、空腹になりドカ食いや間食を摂るようになってしまいます。 理想的な割合は朝3:昼4:夕3の割合です。どこかの食事を抜くと体が飢餓状態となり、食べた物を蓄えようとしますので、体が省エネモードになります。
  2. バランスよく食べる
    丼物、麺類、パンのみ等の単品ではなく定食のように主食、主菜、副食、汁物があるといったメニユーにしましょう。単品メニューは、どうしても糖質に偏ってしまいます。 そうすると血糖値が上がるばかりでなく、筋肉や血液などの体の構成成分の材料となるタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品、乳製品)や、体の調子を整えるビタミン、ミネラル、食物繊維が不足してしまいます。
  3. 寝る2~3時間前までには食事は済ませる
    夕食の時間が遅くなればなるほど脂肪は体内に蓄積されやすくなります。特に22時から午前2時はBMAL1という体に脂肪をため込むタンパク質の分泌が活発になります。 夕食が遅くなる時はできれば、17時~18時頃に軽めに摂り、夕食は低脂肪の食事を少量摂るようにします。
  4. 野菜・きのこ類・海藻類を1日350g以上食べる
    野菜、きのこ類、海藻類は低カロリーで食物繊維が多く、満腹感を感じることが出来ます。毎食小皿(70g)を1皿~2皿ずつ取り入れると350gになります。ただし、じゃが芋やカボチャなどの糖質が多い野菜は食べ過ぎると中性脂肪を増やすことになります。
  5. 腹八分目にする
    満腹まで食べてしまうと糖質や脂質の摂取量も多くなり、結果的に摂取カロリーが増え、肥満に繋がります。「もう少し食べたいな」と思うぐらいでやめておきましょう。
  6. 間食は控える
    菓子類は糖質や脂質が多く、高カロリーです。我慢しすぎてストレスになり過食になるのも良くありません。適量を決めておきましょう。目安は1日の目標摂取量の10~20%までです。多くても200Kcalを超えないようにしましょう。また、間食をする時間は14~16時は太りにくい時間なので、時間や量を調整しましょう。夕食後にデザートが欲しいという方は要注意です。
  7. 糖分入りの飲料は控える
    清涼飲料水や果汁などは腸からの糖の吸収が良く、血糖値が急上昇し、脂肪になりやすくなります。お茶や麦茶、水などで水分補給をしましょう。
  8. ゆっくりよく噛んで食べる
    良く噛んで食べることで、満腹中枢が刺激され、食べ過ぎが不すげます。食欲をコントロールするホルモンの分泌は食後20分後からなので、20分以上かけてゆっくり食事をしましょう。満腹感を感じる前に食事を終えることがないようにしましょう。早く食べると満腹感を感じる前にどんどん必要以上に食べてしまいます。

思いあたることが沢山あるという方もおられることでしょう! 健康的な体を思い浮かべながら(不健康な体を鏡で見るのもモチベーションになることでしょう)まず、1週間実行してみてください。

次回は食事を考える際、簡単に自分にとっての適正量を知る方法をお知らせします!

コラムニスト

管理栄養士  伊藤 教子 

長年、管理栄養士として病院の給食管理・栄養管理に従事後、現在、内科糖尿病専門医院にて糖尿病を中心とする生活習慣病、高齢者の低栄養等の栄養食事指導をしています。
ライフワークとして「あなたの体は、あなたの食べたものでできている」ということを意識した「食」の啓発活動を行なっています。

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