広島の子育て世代に向けた、医療・健康・暮らしにまつわる情報を発信

トップアスリートだけ食事が重要なのか?

2021/04/20

トップアスリートの活躍と共に選手の“食事”が注目を浴びる機会が多くなってきました。

特に体を大きくする競技や体重制限のある競技、トップアスリートの食事などメディアを通しみなさんも目にしたことがあるのではないでしょうか。

トップアスリートだから食事も意識してさすがだな、そう感じる方が多いと思いますが 食事は競技レベル、性別、年齢問わず、スポーツや運動をしている方どの方にも大切な役割を担っています。では食事はどのような役割があるのでしょうか。

食事の役割を心得よう!

私たちの身体は約60兆個の細胞の集合体ですが、全て食べたものから作られています。どの方もみんな「生きるため」に食べているのです。

その上でスポーツをする人はさらに、競技にあった身体つくり、日々の体調管理、怪我を予防する役割もあります。また運動することで消費するエネルギー量も増えるため、身体の細胞も消耗するのでより食事を意識することが大切です。本番で良い結果を発揮するためには、練習の質が良く毎日積み重ねていくことがより良いパフォーマンスに繋がります。日々の体調管理は毎日の食事で身体と心の土台を作るという意識をもつことが選手としての大切な心得です。

生きるために食べるとは?

私たちは生きるために体温を維持したり、心臓や胃腸を動かしたり、脳も絶えず働いています。「基礎代謝」という言葉をご存じでしょうか。1日の消費エネルギー(カロリー)量の約60%を占めています。「生きるために必要なエネルギー」や「1日何もしなくても消費するカロリー」というような説明をすることがあります。成人女性であれば1日の消費エネルギー量が約2000kcalですが、その約60%の1200kcalが生きていくために必要な身体の機能を維持するために消費されています。

そして、残りの約40%の内訳は生活や運動などの「活動時代謝」が約30%、食事を摂ることで消費する「食事誘発性熱産生(DIT)」が約10%となっています。「今日は全然動いていないから食べない」という方がいらっしゃいますが、身体を動かさなくとも身体の機能を守るためにエネルギーを消費しているので、その分のエネルギー源は必要です。そして、スポーツをしている人は活動時代謝が増えるため、より食事からエネルギー量を得ることが必要となります。

このように身体の様々な機能を働かせるために毎日の食事がエネルギー源となっています。また食事には、食べる楽しみや食卓を囲む楽しさなど心を元気にする役割もあります。体と心を健康で人生イキイキと過ごす「コツ」として毎日の食事、そして食事との向き合い方を大切にしていただきたいなと思います。

運動が多い人や成長期の子供たちはエネルギー不足に注意!

運動をしている人は、しない人と比べて消費エネルギー量が必然的に増えます。食事からのエネルギー源が足りない場合は、筋肉や体脂肪を分解してエネルギー源を生み出しています。また、成長期の選手は身体の発育発達にエネルギーも必要で、練習や運動量が多い場合は運動分のエネルギーも必要となるため、意識して食べていなければエネルギー源が不足しがちです。たくさん食べているのに体が大きくならない、というジュニア選手が多くいますが、身長が伸びていれば成長のためにエネルギーが使われており、そうでなければ消化吸収力や食べ方が影響している可能性があります。

また運動量が多ければ、「身体の機能がたくさん働いている」ということになります。筋肉を増やしたり大きくしたりする場合も、筋肉を一度壊して修復することで筋肉を作り出していきます。運動するということは身体によい効果もたくさんあるのですが、身体が働く源である食事が足りない場合は身体の負担になり、疲労が溜まったり、思うように動けなかったり、コンディションやパフォーマンス低下につながってしまいます。

エネルギー不足によりアスリートへの影響は国際的にも危惧されており、図のように、パフォーマンス低下や健康を害する場合があります。自身の運動量と見合った食事量なのか、適切な食べ方なのか、食事の過不足がないのか、などチェックすることをおすすめします。

図引用及び参照:JFA栄養ガイドラインHPより

  • エネルギー不足によるパフォーマンスへの影響
    図1:エネルギー不足によるパフォーマンスへの影響
  • エネルギー不足によって起こる健康問題
    図2:エネルギー不足によって起こる健康問題

運動中は消化吸収が抑制される

食べ物は消化器官によって消化吸収され体内に入り、必要な場所で使われます。消化吸収が活性化されるときは副交感神経が優位、いわゆるリラックスしている状態の時です。しかし、運動をしている人は食後すぐでも練習や試合がある場合や1日のうちほとんど運動している場合もあります。運動中は交感神経が優位になるので、消化吸収力が抑制されてしまう上、運動量が増えると食事量も多く必要となり効率よく消化吸収ができていないこともあります。いくら栄養価の高いものを口にしたとしても消化吸収されなければ体内で活躍できませんので、「消化吸収力」も身体作りの要になります。

全ての選手にとって食べることは重要な役割をもっています

これまでお話しした内容は競技レベルや世代問わず毎日の食事が選手に当てはまる事です。食事を大切に想うことは、自分自身の身体を大切に想うことに繋がりますし、食事への向き合い方は人生や競技への向き合い方に直結しています。食事から体と心を整え、選手としてより良いパフォーマンスを発揮するためだけでなく、これからの人生も元気に過ごしていく土台として大切にしていただけると私も嬉しいです。

公認スポーツ栄養士とは?

まだまだ知らない方も多くいらっしゃいますが、スポーツ栄養の専門職として、公益財団法人日本スポーツ協会と公益財団法人日本栄養士会の共同認定資格で2008年から養成がはじまり2020年10月現在で全国415名(うち広島県7名)が様々な現場で活躍しています。資格取得には、管理栄養士であること等条件があり、運動・スポーツ指導者としての知識やスキルの獲得、インターンシップ実施や厳しい検定試験を経て取得する難易度の高い資格です。

スポーツ現場では、選手個人やチーム・競技団体など食事や栄養に関する自己管理能力を高める栄養教育や食環境調整など食事や栄養に関わるサポートを行っています。 スポーツと食・身体作りや選手の育成でお困りのことがあればぜひお近くの公認スポーツ栄養士またはスポーツ栄養学を専門にしています管理栄養士にご相談ください!

コラムニスト

管理栄養士・公認スポーツ栄養士  馬明 真梨子 

ソフトボール部だった10代の頃からスポーツ傷害や体重管理、食事に悩まされた経験からNSCA認定パーソナルトレーナーと管理栄養士の資格を取得。
大学卒業後、大手フィットネスクラブ、パーソナルトレーニングジムでの運動・栄養指導に携わる。その後、学生から実業団アスリートの寮食献立作成や選手サポート、セミナー講師などの業務に従事。さらに専門的な知識やスキルを習得するためスポーツ栄養の専門家である公認スポーツ栄養士の資格を取得し、これまで700名以上の指導に携わる。
現在、「広島のスポーツを食で盛り上げる」をモットーに、スポーツ栄養サポート・普及教育活動・食環境整備などに力を入れ、セミナー講師、チームスタッフ、企業アドバイザー、専門学校非常勤講師など各分野で選手や広島の方を食で支える取り組みを行っている。

 関連記事

column/btn_column_page
トップ